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ウェブ標準表記Blogは、自社の表記の基準を考えるときに「役に立つ、かもしれない」情報を皆さまと共有することを目的としています。これから会社の表記基準をつくろうとしている方やWebテキストの校正を担当する方、これから文章を書こうとしている方とともに、表記の視点を身近な例から考えてみたいと思います。また、現在進行中の「新常用漢字表(仮称)」に関する最新情報などもお届けします。

2008年10月28日

第26回 漢字小委員会 傍聴報告 ― 漢字の音訓

昨年竣工した「霞が関コモンゲート」は、地下2階、地上33階、周辺の高層ビル群のなかでも一段と背の高い超高層ビルです。かつて高層ビルの代名詞だった「霞が関ビル」が「弟」のように、一歩下がって隣に控えています。
今回、第26回めの審議は、コモンゲート東館の一室で開催されました。今回の審議に使用された部屋は、国際会議にも使えるような重厚感をもち、広さも十分、各委員の机には、線の細い、カーブしたマイクが一台ずつ設置されていて、傍聴席のうしろで聴いている人にも、声の低い委員の声が呼吸づかいとともに届くほど高感度で、今回は、耳の丸みに手を沿わせて懸命に音を聞きとろうとする人の姿を見ませんでした。

字種の追加と削除

第26回の時点で、追加候補字種は191字です。夏ごろには188字でしたが、「蒙」が候補から外され、新たに「刹(サツ・セツ)」、「椎(ツイ)」、「賭(ト・かける)」、遡「ソ・さかのぼる」の4字が追加されています。

「常用漢字(音訓・付表)の変更について」

今回は見出しと同じ題の資料のほかに「「異字同訓」の漢字の用法(追加字種・追加音訓関連)」、「音訓アンケート」などの資料(案)が配布されました。
音訓の追加・削除の候補として示されているものを以下に示します。
(※印がついている語は、当日議論するよう要請されているものです。)

音訓の追加等

1 愛(え)   →愛媛に対応、1字下げ
2 委(ゆだねる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
3 育(はぐくむ)   →音訓の使用実態に基づいて追加
4 応(こたえる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
5 神(か)   →神奈川に対応、1字下げ
6 滑(コツ)   →「稽」が入るので「滑稽」に対応
7 関(かかわる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
8 館(やかた)   →音訓の使用実態に基づいて追加
9 堪(=語例追加)   →音「カン」の語例とした「堪能」を追加、「堪能」は、「タンノウ」とも、と注記
10 阜(ギ)   →岐阜に対応、1字下げ
11 混(こむ)   ※「込む」との関係をどうする?
12 私(わたし)   ※追加するか「わたくし」と入れ替えか?
13 児(ご)   →鹿児島に対応、1字下げ。語例に「稚児」を掲げる
14 滋(シ)   →滋賀に対応、1字下げ
15 臭(におう)   →「匂(におう)」に対応
16 十(=備考欄に注記)   →「ジッ」に「ジュッ」ともと注記
17 旬(シュン)   →音訓の使用実態に基づいて追加
18 城(き)   →茨城・宮城に対応、1字下げ
19 伸(のべる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
20 振(ふれる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
21 粋(いき)   →音訓の使用実態に基づいて追加
22 逝(いく)   →「逝った」に対応
23 拙(つたない)   →音訓の使用実態に基づいて追加
24 創(つくる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
25 速(はやまる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
26 分(いた)   →大分に対応、1字下げ
27 放(ほうる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
28 癒(いえる・いやす)   →音訓の使用実態に基づいて追加
29 要(かなめ)   ※追加するか?
30 良(ラ)   →奈良に対応、1字下げ
31 絡(からめる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
32 力(リキむ)   →使用できることを凡例に追加
33 務(つとまる)   →音訓の使用実態に基づいて追加
34 全(すべて)   →音訓の使用実態に基づいて追加

音訓の削除

1 疲(つからす)   →音訓の使用実態に基づいて追加

誤読の定着

“「堪能」は、「タンノウ」とも”の件に、ぎくっとした方もいらっしゃるのではないでしょうか? 「堪能」は「カンノウ」が本来の読みですが、誤読である「タンノウ」が定着したもの、…ダソウデス。「独擅場(どくせんじょう)」の間違いである「独壇場(どくだんじょう)」が定着して市民権を得たのと同じ類の言葉の変化…ダソウデス(筆者は「カンノウ」という読み方をする人を一度も見たことがないのです。辞書によれば「足んぬ」の転で「たんのう」になったとか)。誤読も皆で使えば正論になるの例。

― 都道府県名の扱いについては、岐阜の「阜」のように、都道府県名にのみ使われる音訓に対して、備考欄に「岐阜県」と注記する。同じ都道府県名でも、東京や群馬などは注記しない。大分などは訓「分(いた)」の備考欄に大分県と注記する― という方針が妥当かどうか審議されました。

付表について

語の追加

1 尻尾(しっぽ)   →音訓の使用実態に基づいて追加
2 固唾(かたず)   →音訓の使用実態に基づいて追加
3 鍛冶(かじ)   →音訓の使用実態に基づいて追加
4 弥生(やよい)   →音訓の使用実態に基づいて追加

変更

1 居士(こじ)   →「一言居士」を「居士」に変更
2 五月(さつき)   →「五月晴れ」を「五月」に変更
3 (お)母さん   →「お母さん」を「(お)母さん」に変更
4 (お)父さん   →「お父さん」を「(お)父さん」に変更
5 (お)兄さん   →「お兄さん」を「(お)兄さん」に変更
6 (お)姉さん   →「お姉さん」を「(お)姉さん」に変更
7 稚児   ※「稚児」が語例欄に入るので、付表から削除

注意事項
付表の扱いの変更:付表に挙げられている語を構成要素として使用することもできる(例:河岸を魚河岸、心地を居心地として使う、など)との注がつけられています。

要望のごく狭いもの

今回の審議では、上に掲げた音訓の追加・削除のほかに、漢字表への掲載のしかたについて議論されました。先に新常用入りが確定している「県名のための」11字(茨栃埼梨阜阪奈岡媛熊鹿)について、「茨城の茨(いばら)」「岐阜の阜(ふ)」「愛媛の媛(ひめ)」などは、その字を含む“県名のための”字(または読み方)であり、これらは、「岡っ引き」「岡惚れ」などのように広く一般的に使用される語をもつくる県名の字とは異なるものである。つまり、“要望のごく狭いもの”であるため1字下げて表示するけれども、47都道府県名をすべて挙げるわけにはいかない、ということなども審議されました。
“要望のごく狭いもの”― 審議を傍聴する楽しみのひとつに、このような場で使用される、他と区別するときのネーミングの面白さがあります。“県名のための”は3月4日のエントリに書きましたので、ここでは、要望のごく狭いものと理解されるため省きます。

東京

都内の会社に勤務していると、わりと気軽に審議を傍聴することができます。しかし、地方在住の方はそう簡単にはまいりませんから、その代わり、この報告を楽しみにしている!という方が全国にいてくださることを知り、上の書き出しになりました(といっても、国語のオリンピックを見てくるわけではないので、今日の見どころとか、委員の今日の表情とかは書けませんけれども…。)

(福島)

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